数ヶ月前に読んだ本。

パーソナル・ダイナミック・メディア「ダイナブック」と、オブジェクト指向プログラミング言語「smalltalk」を生み出したアラン・ケイの論文集。

『アラン・ケイ』著:アラン・ケイ 訳:鶴岡雄二

1992/04 アスキー

alanKay.JPG ISBN:4756101070

アラン・ケイの主な3つの論文と、スピーチ1つがが邦訳されている。

+Personal Dynamic Media, IEEE Computer, March 1977, pp 31-41.

+Microelectronics and the Personal Computer, Scientific American, September 1977, pp. 231-244.

+Computer Software, Scientific American, September 1984, pp. 41-47.

+(スピーチ) Learning vs. Teaching with Educational Technologies, EDUCOM Bulletin, Fall/Winter 1983, pp. 16-20.

■パーソナルダイナミックメディア

誰もが使える個人用の、創造的思考のためのダイナミックなメディアを作れば個人の能力を拡大できるだろう。そのために、タイムシェアリング方式では無く、個人がそれぞれのコンピュータを持つ「ダイナブック」という構想から「暫定版ダイナブック」と呼ぶ小型コンピュータを作った。

データの蓄積と操作、テキストエディタや、絵を描いたり作曲・演奏したりできる表現メディアであり、既存のメディアと異なり能動的に反応してくれるダイナミックなメディアである。

また、ダイナブックの上ではsmalltalkやLOGOなどのプログラム言語を用いて誰もが新しいメディアを作る事ができるメタメディアという性格も持つ。

ダイナブックの上で子どもがペイントプログラムを、高校生が電気回路設計システムを、音楽家が譜面作成システムを自分で作る事ができた。

誰もがダイナブックを持てば、自分の能力を出し切り、複雑な物事の関係を伝えるのを助け、実験やシミュレーションが簡単にできるようになるだろう。

そのために、ダイナブックとして普通のユーザが必要な道具を簡単に作れるような土台となるシステムを設計していく。

■マイクロエレクトロニクスとパーソナル・コンピュータ

書物と同様の発展過程をわずか40年で辿ったパーソナル・コンピュータは、1960年までの20年は限られた人間しか使えなかったが、60年からのリックライダーのタイムシェアリングシステムによって共同利用されるようになった。80年代には高級言語と対話型グラフィックディスプレイを扱えるパーソナル・コンピュータが生まれるだろう。

個人に行き渡ったとして、あらゆる人がさまざまな要求のもとにコンピュータを使いたいとしたら、どう対応するか?

シーモア・パパートの作った「LOGO」という教育向け言語があるが、それを参考にして、あらゆる人が必要な道具を簡単に作れるようになる言語として「smalltalk」を設計した。

現在はソフトウェアよりもハードウェアの方が開発が困難だが、smalltalkでウィンドウの概念を扱う事で簡単になる。4年間に250人ほどの子どもに使わせてみたら、家計簿、情報検索、ドローイング、ペインティング、音楽合成、文書処理、ゲームなどのプログラムが生まれ、smalltalkの設計にフィードバックされた。だいたい3週間あればみんな道具を作るようになる。

こういうGUIの要素を扱うには、従来の手続き型の言語には不向きである。シンボルによる行動とメッセージのやりとりの方が向いている。(オブジェクト指向)

また第三の、「観察者言語」というのがある。シンボルによるメッセージ−行動型言語はそれぞれの関係をやや分析的に解かなければならないが、観察者言語では概念の間を連絡する観点を使う。(その後prologとかになっていく)

smalltalkにはオブジェクトの抽象化と、機能の継承がある。あとsmalltalkの構文はすごい単純にした。

コンピュータの利用には、即興演奏的な探求と作曲的な計画である事が色々試した結果わかった。そういうプログラミング言語が必要になる。

コンピュータの上でシンボルを用いたプログラミング言語を使うことで、現実世界のシミュレーションと、数学などのシンボルを一緒に扱って想像力の限界まで出すことができるようになる。